精神科病棟入院中の出来事。4
まさか病院内であんなことがあるなんて、思いもしなかった。
あの人に初めて話しかけられた時の印象は、一生懸命に話をしてくれるおじさん。
ここではMさんと呼ぶことにする。
Mさんはよく私に話しかけ、私が笑顔で話を聞いたりこたえたりするだけでとても嬉しそうだった。
自分で言うことではないが、「若い女の子」とおしゃべりするのが楽しいんだろうな〜なんて思っていた。
前にも書いたが、そこの病院は互いの病室の行き来が禁止。つまり、Mさんが話しかけてくるのは廊下かデイルームということになる。
ある晩、Mさんが急に私の部屋のドアを開けてきた。
特に用はないとのこと。部屋に入ってくることもなかった。ただ、ドアのところから、おやすみなさい、と。
ちなみに、その時毎日のようにお見舞いに来てくれる彼氏がいた。←これ、重要ポイント
その数日後、またMさんは私の部屋のドアを開けて話しかけてきた。そして、あの言葉を聞いて、やっと気付いたのだ。
「今日来てたの、彼氏?」
この人、怖い。
初めて気づいた。
「そうです。」
そっか。と言ってドアを閉めていった。
…もし、私の病室に彼氏が出入りしていなかったら。もし、それをあの人が見ていなかったら。もし、彼氏じゃないなら。
…今、どうなってた?
こんな時、どうすればいいかも分からない私を救ってくれたのは、同じ病棟の入院仲間だった。
「ねぇ、昨日の夜、Mさん部屋に来てなかった?大丈夫だった?」
その人は、たまたまトイレに行く通りすがりに、私の部屋を覗くMさんを見て不審に思い、話しかけてくれたのだった。
思い切って相談した。
「今すぐにでも看護師さんに相談すべきよ。」
ありがとうございます。今すぐに看護師さんに言います。
結果、退院までMさんに直接何をされることも言われることもなかった。…何もなく、済んだのだけれど。でも。
怖かった。
怖かったんだよ。